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サービスとしての機器 (EaaS):筆者の視点

サービスとしての機器(EaaS:Equipment as a Service)を話題になる時、多くのリーダーは、これをサブスクリプションモデルを定義するもう1つの手段としてしか見なしていません。結局のところ、EaaSはサービスとしてのソフトウェア(SaaS)のコンセプトに基づいており、つまるところサブスクリプションモデルではないかと考えるのです。

EaaSは、ビジネスモデルに関連する大きな物理的価値、つまり資産があるため、もう少し複雑です。SaaSモデルには物理的な資産はなく、価値およびリスクはソフトウェアプラットフォームとその関連保守要件に結び付けられています。SaaS企業のマージンは主として、サブスクリプションの販売コストとプラットフォームのメンテナンス/サポートコスト、および契約に関連するサブスクリプション収入との方程式で成立しています。ご存じのとおり、SaaS企業のマージンは非常に高く、マージンが高ければ高いほど、評価も高くなります。

Technology & Services Industry Associationでは、EaaSを次のように明確に定義しています。

「サービスとしての機器(EaaS)とは、顧客の施設にある機器に付加価値を付けて提供するサービスのことです。最も純粋な形は、技術をサービスとして提供し、顧客の成果の達成を支援するオンプレミスの機器です。顧客は成果ベースのサービスを求めています。」

まさにこのとおりです。これは顧客の所有物ではない資産を、特定の成果を達成するというミッションの下に顧客の施設に設置するサービスです。自分が顧客であるなら、これはとても魅力的に聞こえますよね?資産購入の先行投資や読めないメンテナンスコストのリスクを負うことなく、ビジネスを展開して望む成果を達成することができるからです。

なぜ顧客は移行しているのか?

実は、EaaSの歴史は古く、1960年代にロールスロイス社の「Power-by-the-Hour」ビジネスモデルによって普及し始めましたが、なぜ近年、顧客の需要に合わせて移行の力強さが増していることが見られるのでしょうか?最近のいくつかの出来事を分析してみましょう。

  1. COVID-19:製造業を営む場合、生産ラインに1台およそ25万ドルのCNCマシンが12台必要であると想定してください。マシンは5年のローンで購入し、生産販売からのキャッシュフローで難なく返済できると見込んでいます。しかしパンデミックなどの自然災害が起き、生産ライン全体が長期間停止し、需要が急激に落ち込んだとします。残念ながら合計300万ドルの投資に対する支払い義務が、需要の低下とともに帳消しにされることはなく、今や債務不履行のリスクが現実のものとなってしまうのです。EaaSモデルであれば、生産率の低下による生産結果の変化に応じて、支払いを減額できる可能性があります。契約書には不可抗力の条項がある可能性が高く、責任の100%を顧客が負うということにはなりません。
  2. 経済・金融政策:この40年間、経済・金融情勢が産業の成長を支えてきました。COVID-19のパンデミック時に経済には過剰な流動性が生じ、その後の世界は記録的なインフレ、エネルギー需給の不均衡、労働力不足などの激動状態に直面しています。インフレという獣を飼いならすために、利上げとバランスシートの縮小による量的引き締めが記録的なペースで行われています。平均的なビジネスオーナーやサービス業のリーダーにとって、これにはどのようなことを意味するのでしょうか?資金調達がコスト高になったということです。低金利で資金を借り入れて製造設備や産業機器を購入できた時代は、もはや過去のものとなりました。しかしEaaS契約であれば、事業者は資産を購入する必要がないため、先行投資は少なく、キャッシュフローを確保しておくことができます。
  3. テクノロジーの加速:私たちは今、驚くべき技術進歩の時代に生きています。1970年代以降、ムーアの法則に従って、マイクロチップ上のトランジスタの数は約2年ごとに実質的に倍増しており、コンピュータがどれほど進歩してきたかを見てください。10年前のパソコンを所有して使い続けたいと思う人は誰もいませんが、2~3年ごとに新しいパソコンを買うのも、かなりの出費になります。製造設備や産業機器などの大規模な資産についても、同じ考え方が当てはまります。顧客は、旧式のテクノロジーを使って作業しなければならないという考え方をせず、手元にある現在の資産でいかに最大限の成果を上げるかに焦点を当てるようになりました。

上記の理由からすれば、言うまでもなく、EaaSへの移行は顧客にとって非常に魅力的です。それらの理由のほとんどは、機器の購入者にとって、機器を資本的支出(CAPEX)から事業運営費(OPEX)に移すことの利点を強調しているからです。しかし、メーカーが契約と成果の両方を顧客に提供することは、魅力的なことなのでしょうか?

EaaSへの移行を評価する

先日話し合う機会があったあるサービス業のリーダーの言葉を借りれば、「我々は皆、地上から約6メートルの高さをマッハ4で移動しているような感じ」です。その表現は、経済、サプライチェーン、インフレ、消費者の状況を考えると、今日のサービスリーダーがどのような状況で物事をナビゲートしようとしているかを非常によく言い表していると思います。EaaSへの移行は、周囲の状況に関係なく、それに取りかかるどの企業にとっても大規模な変革です。この道を進むことが正しいとか間違いであるとかは言いませんが、両足を揃えて飛び込む前に、すべての変数、リスク、投資に対するリターンを理解しておくのは良いことです。この変革に挑むことのいくつかのメリットとデメリットについて考察しましょう。

メリット:

  • 収益性と評価:サブスクリプション契約により常に高い利益率での収益が確保されるため、このタイプの投資は機関投資家にとって非常に魅力的です。サービス企業は顧客が第一ですが、株主や投資家にアピールすることも決して優先順位の低いことではありません。
  • 顧客と資産のエンゲージメント:資産を所有するのはOEM、利用するのは顧客となったことで、行動規則は、契約のデータ共有と一貫性のある健全性評価に重点を置くものとなります。このデータにより、OEMはメンテナンスの必要性についてより深く理解し、効率と収益性を改善でき、顧客エンゲージメントでは、継続的な更新とアップセルの機会をもたらすことが理想的です。

       デメリット:

  • 変革への投資:EaaSビジネスモデルでの運用に軸足を移すことは、一夜にしてできるものではなく、または一度のITシステムの変更で実現するものではありません。私個人は大規模な製造業の経営経験はありませんが、EaaSによる営業費用のビジネスモデルへの移行の意義を考えると、取締役会と投資家によって徹底的に検討され承認を受けることは間違いなく必要だと言い切ることができます。このような変革は、承認されたとしても、組織全体のシステム、人材、プロセスの計画、実行、継続的な改善に何年もかかります。さらに、投資家からは投資収益率を追跡しているかどうかを絶えず問われるため、財務プロセスは相当な厳しさをもって監視されることになります。
  • 「大いなる力には、大いなる責任が伴う」:「スパイダーマン」からの引用ですが今説明している状況をよく言い当てています。EaaSを採用すると、その変換が利益を生むなら優れた評価という報酬が得られます。ただし、リスクは完全に皆さんの肩にかかっています。顧客は成果の達成に重点を置きますが、OEMは契約と資産に対するリスクを軽減することに重点を置きます。この場合のリスクとは、資産価値、メンテナンスの必要性、品質不良などに関係したものです。COVID-19が発生したときに、企業が負わなければならなかった負債の額を思い出してください。契約書にある不可抗力の条項については、署名する前に徹底的に分析する必要があります。

EaaSの大変優れたところは、長い旅であっても途中で何度も立ち止まることができるということです。OEMは、資産売却を補完するサービス契約を提供することで変革を開始するかもしれませんが、そこで立ち止まるかもしれません。

どこから始めるか?

他の業界や同業他社が何をしていようとも、ご自身のサービスライフサイクル管理(SLM)、会社の全容を把握し、手元にある製品、データ、システム、人材、プロセスの評価に基づいて会社にとって最善の意思決定を行うことが重要です。デジタルトランスフォーメーション(DX)がかつてないほど広く行き渡っている今日の世界において、リーダーは在庫計画、価格設定、契約管理など、SLMの個々の部分を常に変更しています。  EaaSへの移行を決定するには、ビジネスと顧客にとって情報を得た上で最良の判断を下すために、SLMのすべての構成要素を総合的に分析する必要があります。